蜜月まで何マイル?

    “王様は天然色?”
 

グランドライン攻略の後半戦、
レッドラインを越えてまみえる“新世界”という海域は
そこまでの航路が“楽園”だったと思えるほどの
桁違いな苛酷さだとか。
環境の不思議さ加減も半端ないランクに跳ね上がるその上、
そこに順応して君臨する海獣たちも手ごわいならば、
それらを凌駕・制覇して、悠々と縄張り広げる海賊たちも、
名代の猛者ばかりが君臨しており。
そうまで恐ろしい海だというのに、
数でも多彩さでも話題騒然、
近来 稀なほどの頭数の億越えバウンティを生んだ、
新世代のルーキーらが臆しもせずの続々と、
あの頂上決戦と相前後して、後半の荒海への進攻を果たしており。

 「そういや、
  海賊はほとんどが
  深海の魚人島経由で新世界へ入ったんだろうに。」

陸上ルートは
“マリージョア”とかいう政府直轄の聖地を通過するので、
海賊という身の上を隠したその上、
船もその手前で置いて行かねばならぬ。
例え予算に余裕があったとて、
海賊なんて肩書のまま、新世界へ行こうという顔触れが
なのに…そんな矛盾したことを構えるとも思えないので、

 「あー、そういうことになんだろな。」

シャツの袖を小粋にまくりあげ、
結構長い腕を一杯一杯に広げて抱えた大ボウルに、
純白のメレンゲを泡立てながら。
何をそこへ思ってか、
頭上の中空へと視線を投げつつ応じたのがサンジで。
意を得たそこへ、

 「その割にゃ、
  他の船団の話ってのはあんまり聞かなかったなと思ってさ。」

白ヒゲの縄張りだったというが、
それは2年前のあの頂上決戦までの話で。
だってのに、それ以降も、単なる通過の地としかしないでいるなんて、

 「四皇のマミー何とかって、
  よっぽどの威容が知れ渡ってんだな。」

正確には“ビッグマム”だが…。
自分の思考の辿り着いたゴールへ、
感に入ったようにう〜んと唸ったウソップだったが、

 「デッケンは名を馳せてたけどな。」
 「あの変態は例外。」

すぱんと突っ込んだサンジだったのへ、
やはりすぱんと切り返した辺り、
アレを持ち出される予想はあったらしい。

 “まあ、確かにアレは単なるストーカーだったしねぇ…。”

甲板に出したテーブルに裁縫道具を広げ、
真っ赤なサテンをハイビスカスに仕立てる手前、
何枚も重ねてチョキチョキと、花びらの形に切り取りながら。
彼らの会話へ
こちらさんはその胸中にて突っ込みをいれていたナミであり。

 「今のボスがルフィに変わったのって、
  果たしてちゃんとお守り札になってくれるのかしら。」

まま、革命家ドラゴンの息子だってことや、
あの頂上決戦をルーキーの身で生き残った強わものだってことは
善しにつけ悪しきにつけ、世界中に広まってはいるのだ。
海軍さえ一目置くほどに知名度という点では最強ではあるが。

 「白髭といい次のボスといい、
  四皇続きってランクに 早くも肩を並べるとはねぇ。」

そこまでの大物が仕切るような、
新世界の玄関口にして由緒のある島に、
早速 一波乱を撒き起こした彼らであるには違いなく。
まだまだ所帯は小さいというに、
相変わらず 嵐を呼ばずには航海出来ない麦ワラ海賊団。
さっそくにも、選りにも選って“竜宮”という王宮を
いきなり騒がせた事を発端とする、
王国全体を震撼させた大騒動の核にいた彼らであり。

 “いやまあ、騒ぎの根っこは
  アタシらが来合わせずとも動き出してたようだけど。”

そういう頃合いだったのへ、
たまたま自分たちが来合わせてしまっただけのことだと。
ナミやサンジ、ウソップ辺りはぶるるっと肩震わせて、
もしくは苦笑混じりに言うかも知れぬが。
スカイピアでの騒ぎといい、
そういう“機”に来合わせる機運もまた、
一種の“才”だという説もありますぜ?

 「もーりんさ〜ん。」
 「勘弁してくれ〜〜。」

たちまち、通りすがりのトナカイドクターさんまでが、
うるるんという涙目になっており……。
冒険にワクワクするのが海賊じゃなかったか?

 「冒険、に、政治もからみ出してるけれどもね。」

さらりと呟いたロビンお姉様でしたが、
世界観がこうまで広がっては、それもまた致し方ないかと。

 ま、それはともかく。

波乱の後には羽伸ばしも必要で。
そういや大事なイベントが来ていたよと、
冒険の最中 打っちゃっておかれた、
キッチンの壁掛けカレンダーにあった花丸が主張したので。
楽しいことほど全力であたる一家に相応しく、
我らが船長のお誕生日をお祝いしましょと、
主帆柱にこいのぼりを掲げの、
飾り付けやらプレゼントや御馳走の算段やらに、
クルーの面々がそりゃあ楽しく取り掛かり中。
ウソップとフランキーは
何かしら華やかな仕掛けを思いついての鋭意製作中。
これまでの綿あめ発生装置や
昼間でもキラキラ見える花火をしのぐものが
まんまと発動するから乞ご期待とのことで、
二人して工作室へお籠もりしており。

 「ものすごい文法だこと。」
 「ホントよねぇvv」

どこか怪しい物言いの組み立てはともかく、
腕前は確かなのでと、
だからこその揚げ足を取ったナミとロビンは、
甲板のテーブルで飾り付けの造花やリボンを準備中。
キッチンではサンジと助手のチョッパーが、
芳醇な風味も卓越の技巧も満載の、
肉に魚に野菜に煮物、絵にも描けない料理の数々と。
甘い蠱惑のデザートにスィーツ、
クールでパッションなドリンクの増産態勢にあり。
ブルックは音楽家の本領発揮で、
本番の宴での演奏はもとより、
皆の作業を鼓舞するような、優雅で楽しいBGMを延々と演奏中。

 「肝心なルフィは?」
 「見晴らし台。」

今や立派な屋根も付き、
ちょっとした小部屋状態に進化した見張り台は、
日頃も、見張り番に一番向かないゾロが
習練の場にしていたりする場所で。
こういう準備にもあんまり役には立たない剣豪込みで、
隠れんぼの鬼役よろしく
準備が出来るまで“もーいいかい?”と待機中。

 「それにしても、」

肉料理や魚の料理など、メインのあれこれはグリル中なのか、
メレンゲの次は生クリームを泡立て始めたシェフ殿。

 「我らが船長の一番の奥の手は何なんだろうな。」

妙に感慨深げなお声で、そんなことをば言い出して。
は? ああ? なんだなんだ?と、
丁度作業室から出て来た男衆も合流しての
皆様からの注視を一身に浴びることとなる。

 「結局のところ、タフさじゃね?」
 「そうそう、諦めの悪さよね。」

確かに、様々な窮地において、
特別な馬力だの悪魔の実の能力だのを繰り出しもする彼だけど。
それらを挫かれての膝を折る羽目にだって、
数え切れないほど遭ってもいる。
それでも、何度でも立ち上がり、前進をやめないからこそ、
今の今、ここに…新世界にいる彼らなワケで。

 「せめて粘り強いって言い方に…。」
 「そういうチョッパーだって、
  そりゃあ執拗にアプローチされて仲間入りしたんじゃない。」
 「あら、そうだったの?」
 「ええ。ロビンともフランキーとも同んなじよ。」

  あ、でも。
  俺も嫌々だったのを口説かれたって順番ではあるな。

  それ言ったらあたしだって。

  ゾロとウソップはそういう仲間入りじゃなかったのか?

  おおおお、俺は執拗に勧誘されたサ。
  6000人の部下を置いて故郷を出るワケにはいかなかったが、
  どうしてもと乞われてだな。

  あらぁ? そうだったかしら?

  まああれだ、ゾロくらいのもんじゃねぇのか?
  特に抵抗もなく仲間になったってのは。

  私も喜んで仲間にしていただきましたvv

  いや、ブルックはいろいろ特殊が過ぎんだろう。
  ラブーンと逢わせたいとか、
  こっちの事情もあってのことで。


わいわいとにぎやかに、
じぶんたちの船長をついついこき下ろしている彼らだが、
どんな事態にだって、どんな嵐にだって、
絶対に止まらない、絶対に折れないことを知っているから。

  誇りだし、自慢だし、
  愛すべき船長だと、こっそり自負しているのであって。

そして、
そんな彼をアテにしてるんじゃない、
そんな彼だと信じていればこそ、
この俺様が このわたくしが、傘下に入ってやったのだぞよと。
火急以外の場面では てんでアテにならない彼のこと、
フォローしてやる気満々の皆様なのでもあって。



  「やっぱ俺はあいつの女運が憎いっ!」

  “なんだ、それかやっぱり。”×@

大体、何でまたああも美人にばっか縁があるかな、あいつ。
しらほしちゃんといい、七武海の女帝様といい、
九蛇のアマゾネスの皆様といい。
そういやアルビダとかいう美人の海賊にも追われてなかったか?と。
生クリームが固まりすぎての石鹸になりそうなほど、
奥歯をぐぐうと咬みしめて、
目一杯の力を込めて掻き回すシェフ殿へは、

 「その点で おめぇがルフィより分が悪いのはあれじゃねぇのか?」
 「あれってなぁ、何んだよっ。」

生身で最年長のフランキーが、
前から思ってたらしいことをすっぱりと指摘してのいわく。

 「下心が有るか無いか。」
 「う…………。////////」

そこをはっきり否定できないから、
鼻血でえらいことになったんじゃないかと、
チョッパーせんせえからまで
過ぎ去った話を蒸し返されたコックさんでしたが。(笑)
メガバンクの研究所がらみのシーズンで、
図らずも実は視覚的シチュだけで満足する
案外とかわいいすけべえだと判明したりもするのは
後のお話しだったのであり。

  あ、しまった。
  肝心のお二人が出て来とらん、と。
  慌てて覗いた見張り小屋にては、

 「そういや、そのかっこって女護ヶ島の女が作ったんだってな。」
 「おおvv」

今頃気がついたんか あんたはという、
相変わらずの蛍光灯ぶりだった誰かさん。
腰から刀を外しての、ゆったり待機中の剣豪さんのお言いようへ、
傍若無人な座敷猫よろしく、お膝に乗り上げて来た我らがキャプテンが、
こちらさんもまた、天下無敵の天真爛漫、
それは屈託なく“そだぞvv”と応じ、

 「似合ってねぇか?」

どういう加工か、
裾へいくほどフリルが波打つ 袖や腰回りなのを。
見やすくするべく、
パッと両腕を広げる無邪気さよ。
すぐの間近でそんな格好になったルフィだったのへ、
鋭角な目許をやや眇め、
じぃいっと見やること……何分間だったものか。

 「…………うん。いや、いんじゃね?」

視野の中、いつも赤いのがひらひらしていて
金魚みてぇだと思ってたらしい、
いろんな意味から突っ込みどころ満載の剣豪なのも相変わらず。


 相変わらずの仲間たちと一緒に、
 大好きな船長へのお祝いのエール、
 さあ皆さんも、ご陽気に叫びましょうぞ。


  
HAPPY BIRTHDAY! TO LUFFY!!





   〜Fine〜  2012.05.04.


  *お誕生日は明日ですが、まずはの原作拡張版からお一つ。
   幾つ書けるかは未定ですが、
   5月中は何とか頑張りますね?

   それと、
   ちょみっとネタバレのフライングしててすいません。
   どこの同人誌かという“人格入れ替わりネタ”を、
   まさか原作者様がやってくださろうとは。
   (そして、鏡や写真で満足してそうなサンジさんたら…。)
   ルフィの女子化も
   サラダちゃんとかいうキャラで
   やってくれたと噂に聞いておりますし。
   早くアニメが追いついてくれないものか……。(ワクワク)vv

ご感想はこちらまでvv めーるふぉーむvv

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